三島駅周辺の再開発が不動産価格に与える影響と今後の見通し

昭和58年撮影の三島駅南口。現在は東街区再開発が進むエリアの当時の風景。

三島駅の目の前で、地上24階建て・高さ約90mのタワーマンションを含む大規模再開発が進んでいます。

2024年4月に着工し、2028年2月の完成を目指す「三島駅南口東街区再開発事業」。総事業費約261億円、延床面積55,765㎡、参加企業にはミサワホーム・野村不動産・三菱地所レジデンスという大手デベロッパー3社が名を連ねる、三島市では過去に例のない規模のプロジェクトです。

この再開発は、三島市の不動産価格にどのような影響を与えるのでしょうか。

アイさん

三島駅前に大きなビルが建つって聞いたんじゃ。自分の土地の価格にも影響はあるんじゃろうか?

たかの

「駅前のことだから自分には関係ない」と思っている方が多いのですが、実は駅から離れた地域にも影響が出ます。ただし、良い影響が届くエリアと、ほとんど届かないエリアがあるんです。

このページでは、再開発の具体的な中身から、三島市内のどのエリアにどれだけの影響があるのかを、公示地価などの具体的なデータを使って検証します。

「再開発があるから三島の土地はこれから上がる」とは限りません。 この記事を読み終えた後、ご自身の土地がどのポジションにあるのか、冷静に判断できるようになることを目指しています。

もくじ

三島駅南口で何が建つのか?再開発の全体像

高層タワーと中層棟が一体となった複合施設の完成予想図

三島駅南口の東側、バスターミナルのすぐ隣で進んでいるのが「三島駅南口東街区A地区第一種市街地再開発事業」です。

事業の基本情報

項目 内容
所在地 静岡県三島市一番町(三島駅南口 徒歩2分)
事業名 三島駅南口東街区A地区第一種市街地再開発事業
事業主体 三島駅南口東街区A地区市街地再開発組合
参加組合員 ミサワホーム(代表)、東レ建設、野村不動産、三菱地所レジデンス
設計 アール・アイ・エー
施工 東急・小野・山本建設工事共同企業体
総事業費 約261億円
敷地面積 10,050㎡(A地区)
延床面積 55,765㎡
構造 鉄筋コンクリート造
着工 2024年4月15日
竣工予定 2028年2月

この再開発の歴史:実は40年近い紆余曲折がある

たかの

実はこの再開発、最近始まった話ではありません。検討開始は昭和62年(1987年)、今から約40年前のことです。

三島駅前再開発のタイムラインを整理すると、以下の通りです。

出来事
1987年(昭和62年) 三島駅前再開発の検討開始
2011年(平成23年) 事業化の動き → 東日本大震災の影響で白紙に
2017年(平成29年) ミサワホームを代表とするJVが事業協力者に選定
2018年8月 事業協力協定を締結
2020年(令和2年) 都市計画決定
2022年(令和4年) 再開発組合の設立認可
2024年4月15日 着工
2025年(現在) 基礎工事・躯体工事が本格化。大型タワークレーン設置済み
2028年2月(予定) 竣工

40年近く動かなかったプロジェクトが、ようやく形になり始めたという背景を知っておくと、この再開発が三島市にとってどれほど大きな意味を持つかが分かります。

建物の構成:住宅・商業・医療・子育て支援の複合施設

再開発エリアはA地区(第一種市街地再開発事業)とB地区(事業用定期借地事業)に分かれ、合計6棟の建物が建設されます。

A地区の4棟:

A棟(地上24階・高さ約90.6m) — 三島市で最も高い建物になります。分譲マンション194戸。

階数 用途
5〜24階 分譲マンション(194戸)
4階 医療施設
2〜3階 店舗
1〜2階 住宅共用部

B棟(地上6階) — 子育て・オフィス・賃貸住宅の複合棟

階数 用途
5〜6階 賃貸住宅
4階 オフィス(事務所)
3階 子育て支援施設(保育園・各種教室)
1〜2階 店舗

C棟(地上7階) — 自走式駐車場。総台数688台(商業用333台、住宅用293台、市営駐車場62台)。出入口は商業用と住宅用で分離。

D棟(地上10階) — 分譲マンション88戸(2LDK〜4LDK、約65㎡〜約85㎡)

階数 用途
3〜10階 分譲マンション(88戸)
1〜2階 店舗

B地区の2棟:

E棟(地上2階) — 駅前ロータリーに面する円形の建物。飲食店舗。

F棟(地上8階) — 1〜2階が店舗、3〜8階がホテル。事業主体はミサワホーム、土地所有者は三島市。

住宅の供給量:分譲マンション282戸+賃貸住宅

アイさん

住宅はどのくらい入るんですか?

たかの

A棟194戸+D棟88戸で分譲マンション282戸、B棟の賃貸住宅が数十戸です。合わせて約300世帯以上が新たに駅前に住むことになります。分譲マンションだけで約705人(282戸×世帯人数2.5人)の入居が見込まれます。

この数字の大きさを別の角度から見てみましょう。

比較指標 数値
再開発の分譲マンション 282戸
三島市の年間新設住宅着工戸数(持家・分譲合計) 394戸(2020年実績)
再開発マンション ÷ 年間着工戸数 約72%
再開発マンション想定入居人口(世帯人数2.5人として) 約705人
三島市の年間人口減少数 約1,329人(2024→2025年)

三島市の年間供給量の約7割に相当するマンションが、駅前に一気に供給されるわけです。これは住宅市場にとって非常に大きなインパクトがあります。

注目すべき3つのポイント

1つ目は、参加企業の顔ぶれです。

ミサワホーム(代表企業)、東レ建設、野村不動産、三菱地所レジデンス。地方都市の再開発で大手デベロッパーが3社揃うのは珍しく、三島駅前のポテンシャルに対する評価の高さを示しています。

特に三菱地所レジデンスと野村不動産は、首都圏のタワーマンション開発で豊富な実績を持つ企業です。この2社が参画しているのは、三島駅の新幹線アクセス(品川まで最短37分、東京まで最短44分)を活かした「東京通勤層」の需要を見込んでいるためと考えられます。

2つ目は、単なるマンションではなく「街の機能」の集約であることです。

三島市は「スマートウエルネスシティみしま」をコンセプトに掲げています。

医療施設(4階)、保育園・子育て支援施設(B棟3階)、オフィス(B棟4階)、ホテル(F棟)、商業施設(各棟低層部)、駐車場(C棟688台)と、都市の基幹機能が駅前に集約されます。

3つ目は、地下水保全への配慮です。

三島市は富士山の湧水で知られる「水の都」です。楽寿園の小浜池や白滝公園の湧水は観光資源でもあります。

この再開発では地下水保全のため、建物基礎は地下水位より上に設置し、地下水を汲み上げない設計になっています。

着工後も「地下水対策委員会」が定期的にモニタリングを実施しており、2025年8月の第11回委員会では「建設工事による周辺地下水への影響は確認されていない」と報告されています。

三島駅周辺の地価は「すでに動いている」

アイさん

再開発の影響は、完成してから出てくるもんなんじゃろ?

たかの

いいえ、すでに始まっています。公示地価のデータを見ると、その動きは明らかです。

駅前商業地(一番町15-21)は7年間で+10%上昇

三島市の公示地価で最も高い地点は「三島市一番町15-21」です。この地点は三島駅から100m、まさに再開発エリアの目の前です。

公示地価(万円/㎡) 坪単価(万円) 前年比 再開発の動き
2018 30.8 101.8 事業協力協定を締結
2019 31.0 102.5 +0.6% ⬆︎ 市民説明会を実施
2020 31.4 103.8 +1.3% ⬆︎ 都市計画決定
2021 31.6 104.5 +0.6% ⬆︎ コロナ禍で鈍化
2022 31.9 105.5 +0.9% ⬆︎ 組合設立認可
2023 32.4 107.1 +1.6% ⬆︎ 工事準備が本格化
2024 33.2 109.8 +2.5% ⬆︎ 着工(4月15日)
2025 34.0 112.4 +2.4% ⬆︎ 躯体工事本格化
出典

国土交通省「地価公示」(2018〜2025年)

2018年→2025年で30.8万円/㎡ → 34.0万円/㎡7年間で約10%の上昇です。

特に注目すべきは2つの点です。

  1. 再開発の進捗と地価上昇のタイミングが一致している。都市計画決定(2020年)以降、上昇率が徐々に高まっています。
  2. 2023年(+1.6%)→2024年(+2.5%)→2025年(+2.4%)と、2023年以降に上昇ペースが加速している。再開発の着工(2024年4月)前後で上昇率が明確に高まりました。

三島市の住宅地全体はほぼ横ばい、一部は下落

駅前商業地の上昇に対して、三島市全体の住宅地公示地価を見ると、景色はまったく異なります。

住宅地 平均(万円/㎡) 前年比 商業地 平均(万円/㎡) 前年比
2022 9.84 +0.1% 19.0 +0.7%
2023 9.86 +0.2% 19.3 +1.1%
2024 9.87 +0.1% 19.6 +1.4%
2025 9.85 -0.2% ⬇︎ 19.9 +1.5% ⬆︎

住宅地の平均はほぼ横ばいから2025年は微減に転じています。 商業地はプラスが続いていますが、これは一番町・文教町など駅前地点の上昇が平均を引き上げているためです。

駅からの距離別に見ると、明暗がくっきり分かれる

三島駅からの距離別に2025年公示地価を並べてみると、再開発の影響範囲が浮き彫りになります。

地点 駅距離 用途 公示地価(万円/㎡) 坪単価(万円) 前年比
一番町15-21 100m 商業地 34.0 112.4 +2.4% ⬆︎
文教町1-5-6 150m 商業地 27.1 89.6 +2.3% ⬆︎
大宮町2-13-15 700m 住宅地 17.4 57.5 +3.0% ⬆︎
初音台8-8 2,500m 住宅地 8.2 27.1 -1.0% ⬇︎
富士ビレッジ23-8 2,500m 住宅地 8.51 28.1 -0.6% ⬇︎
芙蓉台1-10-15 3,600m 住宅地 7.32 24.2 -0.8% ⬇︎
出典

国土交通省 地価公示(令和7年1月1日基準)・不動産情報ライブラリ

たかの

この表が、この記事で最も重要なデータです。 駅100mの一番町は+2.4%上昇、150mの文教町は+2.3%上昇、700mの大宮町住宅地では+3.0%と商業地を上回る上昇率です。ところが2.5km圏の初音台は-1.0%、富士ビレッジは-0.6%といずれもマイナスに転じており、3.6kmの芙蓉台では-0.8%の下落です。駅から約2.5kmを境に、上昇と下落がはっきり分かれています。

「再開発の恩恵」と「人口減少の下落圧力」が同時に起きていて、駅から離れるほど人口減少の影響が上回る。これが三島市の不動産市場の実態です。

他都市の事例に学ぶ:再開発の効果はどこまで届くのか?

三島の再開発が今後どうなるかを予測するために、静岡県内の類似事例を見てみます。

事例1:静岡市葵区「新静岡セノバ」周辺

静岡市葵区では、中心部で再開発が相次ぎました。

プロジェクト 内容
2011年 新静岡セノバ開業 地上10階の複合商業ビル
2014年 ザ・呉服町タワー完成 店舗・事務所・集合住宅の複合タワー
2018年 札の辻クロス オープン 多目的ホール、有料老人ホーム、店舗

結果として鷹匠・両替町・呉服町エリアの商業地価は高い伸び率を記録しました。

しかし、同じ静岡市でも清水区は下落が続いています

清水区は葵区・駿河区と比べて人口減少が大きく、沿岸部では津波リスクの懸念も地価を押し下げています。

事例2:沼津市「ららぽーと沼津」の影響

2019年10月にららぽーと沼津が沼津駅北方に開業しました。

生活利便性の向上は好材料となりましたが、津波リスクのない内陸部の住宅地価でさえ「下落率の縮小」にとどまり、上昇に転じるまでには至っていません。

大型商業施設の開業でも「下落が止まった」レベルだったことは、三島の再開発でもエリアによっては同様の結果になる可能性を示しています。

共通する法則:地方都市の再開発効果は駅前1kmに集中する

これらの事例を整理すると、地方都市の再開発には共通のパターンがあります。

距離 影響 具体的な動き
駅前〜500m 直接的に上昇 商業地で年+2〜5%の上昇も
500m〜1km やや上昇〜横ばい 生活利便性向上で需要が底堅い
1〜3km 微増〜横ばい 間接効果で下支え。人口減少との綱引き
3km以上 ほとんど影響なし 人口減少・高齢化が支配的

三島市の地域別に検証:あなたの土地はどのゾーン?

ここからが、この記事の核心です。三島駅前の再開発が、三島市内の各エリアにどう影響するかを3ゾーンに分けて検証します。

ゾーン1:直接的な恩恵エリア(三島駅 徒歩15分以内・約1km)

ゾーン1の概要
・該当地域:一番町、広小路町、本町、大社町、芝本町、文教町、泉町、中央町、東本町、大宮町
・2025年の地価水準:商業地 27.1〜34.0万円/㎡ | 住宅地 17.4万円/㎡前後
・前年比:+2.3%〜+3.0%(上昇中)

このエリアには、以下の5つのプラス効果が見込まれます。

① 約705人の人口流入(推計)

分譲マンション282戸に世帯人数を平均2.5人として約705人が入居。さらにB棟の賃貸住宅を含めると300世帯以上が駅前に住み始めます。三島市の人口が年間約1,300人減少している中で、駅前に705人が増えるのは非常に大きなインパクトです。

② 商業の賑わい回復

A棟・B棟・D棟・E棟の低層階に店舗、F棟にホテル(約100室想定)が入ります。ホテルの年間宿泊者数を稼働率60%で試算すると年間約22,000人泊。飲食・物販への波及効果も含め、駅前の来訪者は大幅に増加する見込みです。

③ 医療・子育て機能の集約

4階の医療施設とB棟3階の子育て支援施設は、新幹線通勤者にとって「駅前で用事が完結する」環境を作り出します。保育園のお迎え→買い物→帰宅が駅前で完結する生活動線は、都市居住の大きな魅力です。

④ 駐車場688台の集客効果

C棟の駐車場は商業用333台・市営62台を含む計688台。三島は車社会ですから、駐車場の充実は周辺からの来訪者数に直結します。

⑤ 周辺商業地・住宅地への波及

広小路通りや三島大社方面への人流増加で、沿道の商業地にもプラスの波及が期待できます。

ゾーン2:間接的な影響エリア(三島駅 徒歩15〜40分・約1〜3km)

ゾーン2の概要
・該当地域:初音台、富士ビレッジ、加茂川町、西若町、寿町、錦が丘、東町、平田、南田町
・2025年の地価水準:住宅地 8.2〜8.5万円/㎡(初音台8-8・富士ビレッジ23-8 公示地価)
・前年比:-0.6%〜-1.0%(下落傾向)

アイさん

駅からちょっと離れたエリアはどうなるんですか?

プラス要因:

  • 三島市のブランド力向上(「三島にタワマンがある」「駅前が変わった」という認知効果)
  • 新幹線通勤の利便性向上で、三島への移住希望者が増える可能性。三島〜品川は新幹線で最短37分、定期代は月額88,650円。3LDK家賃で東京都三鷹市と月約14万円の差がある
  • 駅前の商業・医療・子育て機能充実で、自家用車での来訪者も恩恵を受ける

マイナス要因:

  • 人口減少が続く。三島市の人口は2025年1月時点で104,961人(外国人含む)、2013年の112,632人から約12年間で約7,700人減少
  • 三島市の65歳以上の高齢者は総人口の30.8%。人口の約3.2人に1人が65歳以上(2025年1月時点)
  • 出生数は2022年時点で577人(前年比-10.7%)。10年前(2012年)の855人から32.5%減少

このゾーンの見通し: 初音台の公示地価は-1.0%、富士ビレッジは-0.6%と、駅から2.5km圏の住宅地はいずれも下落しています。

駅前〜1km圏では+2.3〜+3.0%の上昇が見られる一方、2.5km圏では再開発の恩恵がほぼ届いていないことが数字に表れています。

人口減少の下落圧力が再開発のプラス効果を上回っており、今後も横ばい〜微減が続く可能性が高いエリアです。

ゾーン3:影響が届きにくいエリア(三島駅 3km超・バス便中心)

ゾーン3の概要
・該当地域:芙蓉台、徳倉、松が丘、三恵台、大場など
・2025年の地価水準:住宅地 7.3万円/㎡前後(芙蓉台1-10-15 公示地価)
・前年比:-0.8%(下落が続いている)

たかの

率直に申し上げると、三島駅前の再開発がこれらの地域の土地価格を押し上げる効果はほぼありません。 データが明確にそれを示しています。

芙蓉台の例:

項目 数値
2025年 公示地価 7.32万円/㎡(24.2万円/坪)
前年比 -0.8% ⬇︎
三島駅からの距離 約3.6km(バス便中心)
同じ年の駅前商業地の変動率 +2.4% ⬆︎
3.2ポイント

1992年のバブルピーク時と比較すると、三島市の住宅地平均はピーク時の約3分の1まで下落しています。駅から離れた住宅地では、さらに下落率が大きくなります。
なぜ影響が届かないのか:3つの構造的理由
理由1:買い手の絶対数が減っている

人口 増減
2015年 110,783人
2020年 107,474人 5年で-3,309人 ⬇︎
2025年 103,359人 5年で-4,115人 ⬇︎

※住民基本台帳・外国人除く

直近5年の減少ペースが加速しています。

さらに、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2045年に84,984人まで減少する見込みで、これは1975年頃とほぼ同じ水準です。

住宅を購入する中心年代である30歳代は、2020年から2030年までに約1,800人減少し、同期間に75歳以上の高齢者は約3,100人増加すると予測されています。

理由2:空き家が増え続ける

三島市の空き家率は2018年(住宅・土地統計調査)時点で14.4%。全国平均(13.6%)を上回っています。

調査から7年が経過しており、現在はさらに上昇していると考えられます。特にゾーン3に該当するバス便エリアは、空き家増加の影響を最も強く受けます。

理由3:災害リスクの顕在化

三島市のハザードマップによると、居住地域の約3分の1が洪水浸水想定区域または土砂災害警戒区域に該当します。

特に狩野川・大場川周辺の南部地域は水害リスクが高く、災害リスクに対する意識が高まる中で、これらのエリアの土地需要は構造的に弱まっています。

タワーマンション282戸が周辺に与える「もう一つの影響」

再開発にはプラス面だけでなく、注意すべき側面もあります。

新築マンション供給と中古市場の競合

282戸の分譲マンションは、三島市の年間新設住宅着工戸数(持家・分譲合計394戸)の約72%に相当する大量供給です。

アイさん

中古マンションや中古住宅の値段が下がることもあるんですか?

たかの

可能性はあります。特に以下の物件は影響を受けやすいでしょう。

影響を受けやすい物件:

  1. 三島駅周辺の築20年以上の中古マンション:新築タワーマンションと直接競合。設備・管理面での見劣りが価格に反映される可能性
  2. 三島広小路〜大場エリアの中古戸建住宅:「新幹線通勤+駅前の都市機能」を備えた新築マンションが競合相手になることで、郊外戸建ての相対的な魅力が低下
  3. 三島駅周辺の賃貸市場:B棟に賃貸住宅が入ることで、周辺の賃貸物件の空室率上昇リスク

影響が限定的な物件:
駅から3km以上離れた住宅地(芙蓉台・徳倉等)は、そもそも駅前タワーマンションとは購入層・価格帯が異なるため、直接的な競合は起きにくいと考えられます。

ただし、これらのエリアの価格下落は、再開発とは関係なく、人口減少と高齢化によって構造的に進行しています。

再開発の「見落とされがちな論点」:三島が選ばれている本当の理由

ここまで、再開発が不動産価格に与える影響をデータで検証してきました。しかし、不動産の専門家として、もうひとつ触れておかなければならない論点があります。

この再開発は、三島の不動産価値を本当の意味で高めるのか?
という問いです。

アイさん

え? 再開発すれば街が良くなって、価値も上がるんじゃないんですか?

たかの

容積率や床面積、事業収支といった「数字」が改善することと、まちとしての価値が上がることは、実は同義ではありません。ここが見落とされがちなポイントです。

移住者が三島に惹かれているのは「利便性」ではない

私たちは三島市の不動産会社として、首都圏からの移住者と日常的に接しています。

ここ5年で移住者は確実に増えました。コロナ以降の「東京一極集中からの脱出」の流れもありますが、それ以上に「三島だから選ばれた」という実感があります。

では、移住者は三島の何に惹かれているのか。彼らの声を集約すると、答えは意外なほどシンプルです。

移住者の声
地方に求めるのは「暮らしやすさ」と「温かみ」。自然が身近にあって、地域の人との適度な距離感がある。完全に閉鎖的ではなく、地域に馴染みやすい空気がある。ただの場所じゃなくて、「自分の居場所になりそう」と感じられるかどうか。

つまり、移住者が三島を選ぶ理由は「東京みたいに便利だから」ではなく、「東京とは違うからいい」なのです。

三島の強みを具体的に挙げると、こういうことです。

  • 源兵衛川沿いを子どもが歩いている風景
  • 三嶋大社の参道に残る商店街のスケール感
  • 楽寿園や白滝公園の湧水が日常の中にあること
  • しゃぎりの音が聞こえる祭りの文化
  • 歩く人のスピードがゆっくりであること

これらはどれも、高層ビルや大規模商業施設が生み出すものではありません。人の距離感と、暮らしの余白

三島の不動産が持つ本当の価値は、ここにあります。

「全国どこにでもある駅前」になるリスク

再開発で駅前に24階建てのタワーマンション、チェーン店の入る商業施設、ビジネスホテルが並ぶ光景は、静岡市でも浜松市でも、あるいは全国どの地方都市でも見られるものです。

もちろん、再開発そのものを否定するつもりはありません。

駅前のインフラが老朽化し、防災面でも更新が必要な現実があります。三島市の人口減少に歯止めをかけるための施策としても、一定の合理性はあります。

しかし、問題はバランスです。

数字で見える価値(地価上昇、容積率、商業床面積)を追求するあまり、数字では測れない価値(まちの空気感、歩けるスケール、暮らしの余白)が損なわれたとき、三島が三島として選ばれる理由そのものが弱まるリスクがあります。

これが不動産価格にどう影響するか

この論点は、抽象的な「まちづくり論」ではなく、不動産価格に直結する問題です。

三島の住宅地価を下支えしている要因のひとつが、「首都圏からの移住需要」です。 新幹線で品川まで37分というアクセスに加え、三島ならではの暮らしの質が、移住者を引きつけています。

もし再開発によって三島の駅前が「どこにでもある地方都市の駅前」に変わってしまい、移住者が「わざわざ三島を選ぶ理由」が薄れたとしたら——。

駅前の商業地価は再開発効果で上がるかもしれませんが、三島市全体としての移住吸引力が低下し、中長期的にはゾーン2・ゾーン3の住宅地価をさらに押し下げる方向に作用する可能性があります。

たかの

再開発の経済効果を否定するのではありません。ただ、「再開発=まちの価値が上がる」と無条件に信じるのは危険です。三島が選ばれている理由は何か。その理由が再開発後も保たれるのか。不動産の判断をする上でも、この視点は持っておいてほしいと思っています。

売却を検討している方が知っておくべき3つのポイント

アイさん

再開発があるなら、売るのを待った方がいいのでは?

たかの

「待つべきかどうか」は、あなたの土地の場所によって答えが正反対に変わります。

ポイント1:地価が動くタイミング — 「期待の織り込み」が加速している

再開発が不動産価格に影響を与えるタイミングは、一般的に3段階あります。

段階 地価への影響 三島の場合
①計画発表・都市計画決定 期待が織り込まれ上昇開始 2020年(
②着工 実現確実で安心感が追加上昇に 2024年4月(
③竣工・供用開始 実際の効果次第。期待割れなら調整 2028年2月(これから

一番町の公示地価データを見ると、2023年(+1.6%)→2024年(+2.5%)→2025年(+2.4%)と2023年以降に上昇ペースが加速しています。

着工(2024年4月)を境に、再開発の実現性が高まったことで期待が価格に反映されている段階と考えられます。

竣工後にさらに上昇するかどうかは、実際に「どれだけの集客・居住人口増が実現するか」にかかっています。 現在は着工後の加速局面にありますが、完成後に期待ほどの効果がなければ調整局面に入るリスクもあります。

ポイント2:「再開発バブル」のリスク — 竣工後に地価が調整する可能性

以下のリスク要因は認識しておく必要があります。

  • 282戸の販売動向:仮に5,000万〜7,000万円台の価格設定になった場合、三島市の所得水準で購入できる層は限定される。東京通勤層の購入がどれだけ見込めるかが鍵
  • ホテルの稼働率:三島は観光地ではあるが、年間を通じた安定稼働が可能かは未知数
  • テナント誘致:商業施設のテナント入居が想定通りに進むかどうか

ポイント3:あなたの土地が恩恵を受けるかは「立地次第」

ゾーン 売却の判断
ゾーン1(駅前1km以内) 売却を急ぐ必要は低い。竣工(2028年)まで様子を見る選択肢もある。ただし竣工後の調整リスクも考慮
ゾーン2(1〜3km) 再開発単独での上昇は期待しにくい。金利動向・人口減少と合わせて総合判断
ゾーン3(3km以上) 再開発を待つメリットはほぼない。 人口は年間約1,300人ペースで減少中。待てば待つほど買い手が減る構造

たかの

ゾーン3に該当する方へ、はっきりお伝えしたいことがあります。三島市では2020年から2030年の10年間で、住宅購入の中心年代である30歳代が1,800人減り、75歳以上が3,100人増えます。「来年売れば今年より安くなる可能性が高い」 — これが、このエリアの不動産市場の現実です。再開発のニュースに期待して売却を先延ばしにすることは、最もリスクの高い選択かもしれません。

まとめ:再開発の恩恵は「駅前1km」に集中する

三島駅南口の再開発は、三島市にとって数十年に一度の大規模プロジェクトです。駅前の賑わいが回復し、三島市全体のブランド力が向上する点では、市全体にとってプラスの出来事です。

しかし、不動産価格への影響は地域によって全く異なります。

ゾーン 該当地域(例) 駅距離 2025年の地価動向 再開発の影響
1 一番町・文教町・大宮町 〜1km +2.3〜+3.0%上昇 直接的なプラス。今後も底堅い
2 初音台・富士ビレッジ・加茂川町・寿町 1〜3km -0.6%〜-1.0%下落 再開発効果は届かず下落傾向
3 芙蓉台・徳倉・大場 3km超 -0.8%下落 ほぼ届かない。人口減少が支配的

たかの

「再開発がある=三島の土地は全部上がる」は誤りです。 ご自身の土地がどのゾーンに該当するかを正確に把握し、そのゾーンに適した判断をしてください。

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