日本では年々増え続ける空き家が社会問題となっています。
総務省統計局が2023年4月30日に発表した「住宅・土地統計調査」によると、国内の空き家は900万戸、前回調査の2018年(849万戸)と比べ51万戸の増加で過去最多、空き家率は過去最高の13.8%となっています。
三島市でも例外ではなくその背景には、少子高齢化や人口減、相続、老朽化など、さまざまな要因があります。
空き家が引き起こす悪影響とは何か。空き家問題の現状や課題、個人ができる対策を見ていきましょう。
アイ子さん
たかの
三島市における空き家の現状や将来の見通し、そして活用方法について、分かりやすく説明いたします。
ご家族で空き家の方針を検討する際の参考にしていただければ幸いです。
もくじ
三島市の空き家問題
忘れられてしまったかのようにそのまま放置されてしまう空き家が、三島市内でも目立つようになり地域の問題になっています。
空き家が引き起こしている悪影響とは何か、三島市の空き家の現状を見ていきましょう。
そもそも空き家とは
空き家とは、居住その他の使用がなされていないことが常態である建築物のことを指します。
具体的には、1年間を通して人の出入りの有無や、水道・電気・ガスの使用状況などから総合的に見て「空き家」かどうか判断する、とされています。
空家等対策の推進に関する特別措置法第二条 第一項
一 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。第十四条第二項において同じ。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
空き家が与える悪影響
適切に管理されず放置された空き家は、近隣住民にさまざまな迷惑かけます。
空き家は損傷しやすく、台風で外装材や屋根材が飛ばされる危険や、地震で倒壊するリスクが高まります。屋根や外壁の落下が通行人や近隣の家屋に損害を与えた場合、所有者が損害賠償責任を問われることも考えられます。
さらに、ねずみや害虫の発生、ごみの散乱、外壁の破損や汚れが放置されることで、衛生面や景観面で近隣住民の生活に問題が生じます。
それだけでなく、腐敗したごみによる悪臭、不法侵入者による治安の悪化、立木の枝が隣接する建物への被害等は、地域の不動産価値の低下を招き、経済面でも深刻な影響を与えます。
このように、空き家を適切に管理せずに放置することは、所有者やその家族だけでなく、近隣住民や地域全体に大きな影響を与えることになります。
データで見る三島市の空き家の現状
1988年(昭和63年)から2018年(平成30年)の30年間で空き家総数は約1.8倍に増加し、空き家総戸数は7,570戸となりました。すでに不動産は十分余っている状況が見えてきます。
また、三島市内の住宅総数に対する空き家率は年々増加し全国平均を上回る14.4%となっています。これは、7戸に1戸が空き家という水準です。
このまま空き家が増加し続け、空き家率が30%を超えると都市の破綻に繋がる可能性があるとされています。
空き家問題が深刻化する3つの要因と将来予測
空き家問題が深刻化する要因は以下の3つです。
- 高齢化と人口減少
- 相続問題
- 空き家管理・活用の難しさ
それぞれ詳しく解説していきます。
高齢化と人口減少
三島市の総人口は2005年(平成17年)の112,829人をピークに、それ以降減少を続けています。
国立社会保障・人口問題研究所によると三島市の人口は、2020年から2030年までの10年間で、約1万人減少すると発表されています。
さらに、2020年から2030年までに家を買う中心年代である30歳代は1,800人減り、75歳以上の高齢者は3,100人増えます。
三島市の人口は1970年(昭和45年)から急速に増加して50年が経ちました。当時30歳代で購入した世代が50年経ち75〜85歳になり、一斉に不動産の売却を考える時期に来ています。
家を買いたい若者が減り、家を売りたい高齢者が増えるため、今後も空き家が増加し続けることになります。
将来推計人口グラフは国立社会保障・人口問題研究所記載のデータ及び三島市の人口統計情報記載のデータに基づき作成しています。
相続問題
実家の利活用に悩むのは親だけではありません。
空き家の多くは親から子供たちが相続した実家です。実際に空き家の取得経緯を調べると「相続」が約55%を占めていることが分かります。
三島市でも、進学や就職を機に子供たちが首都圏へ移住し、実家が空き家になっても戻る予定がないケースが多く見られます。
相続した実家を活用するには、さまざまな壁が立ちはだかります。
例えば、片づけを始めても思い出がよみがえり、なかなか進まなかったり、実家の活用方法をめぐって兄弟間で意見が対立することも少なくありません。
ある兄弟が売却を提案する一方で、別の兄弟が強く反対することもあり、それぞれが親の気持ちを代弁しているため、どちらが正しいとは一概に言えず、折り合いをつけるのが難しいのが現状です。
こうしてそのまま放置された空き家は、地域の活力の低下につながり空き家問題を一層深刻化させています。
空き家の取得経緯は国土交通省・空き家政策の現状と課題記載のデータに基づき作成しています。
空き家管理と活用の難しさ
空き家を劣化させないためには、最低でも月に1度の定期的な管理作業が欠かせません。しかし、空き家管理には「空き家が遠方にあり管理が困難」といった課題があります。
空き家の所在地と居住地の距離を見ると、全体の約3割が「所要時間1時間超」となっています。
遠方にある空き家の状況に目が行き届かないため、近場の空き家よりも劣化に気づきにくく、周辺への悪影響や近隣トラブルを招きやすくなります。
なかなか定期管理できないからと放置していると、空き家の劣化は進行して活用の幅も狭めてしまいます。
空き家の所在地と居住地の距離は国土交通省・空き家政策の現状と課題記載のデータに基づき作成しています。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」で進む空き家対策
三島市が抱える空き家問題を把握できたところで、国や三島市が進める空き家対策を確認していきましょう。
空き家対策の主な内容は、税制上の措置、適切な管理の促進、義務化です。
国土交通省は2015年(平成27年)から「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行し、本格的な空き家対策が始まりました。三島市でも「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行受けて、2017年(平成29年)に「三島市空家等対策計画」を策定しています。
ここでは、国や三島市が進める空き家対策を解説していきます。
空き家の3,000万円特別控除で税制支援
空き家の発生を抑制する施策の一つとして、国は相続によって取得した空き家の売却益(譲渡所得)に対する税制支援を行なっています。
不動産を売却して利益が出ると譲渡所得税がかかりますが、一定の要件を満たした空き家には、「3,000万円の特別控除」が認められるため、譲渡所得から3,000万円を控除できます。
例えば、親が生前2,000万円で購入したマイホームを相続してを4,500万円で売却した場合、譲渡費用(経費)を差引くと2,300万円の譲渡所得が発生します。しかし、3,000万円の特別控除を適用すると、譲渡所得は控除され、譲渡所得税を0円に抑えることができます。
さらに、相続した空き家等を一定期間内(売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)に売却した場合に適用されるため、相続した空き家が放置される状況の抑制が可能となっています。
この空き家の3,000万円特別控除の適用条件や申告方法について、こちらのページで詳しく解説しています。
空き家の適正管理を推進
空家等対策特別措置法の施行によって、所有者の義務である空き家の適正管理をしない所有者に対して、市町村が助言、指導、勧告といった行政指導、そして勧告しても状況が改善されなかった場合は命令を出すことができるようになりました。
著しく保安上の危険となる恐れがある空き家を「特定空き家」、放置すると特定空き家になりかねない空き家を「管理不全空き家」と定義し、空き家の劣化を防ぎ、不要な空き家を除去する仕組みを構築しています。
そして令和5年12月の法改正により、特定空き家や管理不全空き家に対して行政が指導や勧告、行政代執行を行なう仕組みを導入しました。
勧告された空き家は固定資産税の住宅用地特例が解除され、減税措置が受けられなくなり、固定資産税が将来的に最大6倍になる可能性があります。
さらに命令に違反すると50万円以下の過料に処される場合があり、最終的には空き家が自治体によって強制処分され、その費用が所有者に請求されます。
このように空き家を適切管理するメリットを設けることで、空き家の適正管理を促しているのです。
相続登記の義務化
これまで相続登記を申請するかどうかは相続人の任意とされていましたが、2024年(令和6年)4月1日から相続登記を義務化する法律が施行されました。
相続登記の申請期限は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」となります。条文が少し分かりづらい表現になっていますが、ご自身が相続人であり相続財産に不動産があることを知ったときから3年以内と考えれば大丈夫です。
正当な理由なく、この期限内に登記をしなかった場合、法務局から一定の期間内に申請をすべき旨の「催告」がされます。この催告にも応じなければ、10万円以下の過料が科せられることになります。
この相続登記の義務化を受け、三島市では空き家を相続登記し、譲渡した際の相続登記に要する費用について最大5万円を補助する制度が始まりました。
適用条件は以下の4つとなりますので、当てはまる方は積極的に活用しましょう。
- 空家等が相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであること
- 空家等が相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること
- 空家等の譲渡所得の3,000万円特別控除を受けることができないものであること
- 相続登記が、令和2年4月1日以降であること
三島市の相続登記補助制度について、詳しくは三島市の公式サイトを確認下さい。
解体費用の補助制度
三島市では昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅の解体を対象に、30万円を上限とする「木造住宅の除却事業」補助制度があります。
これ以外にも、1敷地につき18万円を上限とする「ブロック塀等撤去事業」補助制度もありますので、空き家の解体を検討されている方は積極的に利用しましょう。
三島市の補助制度について、詳しくは三島市の公式サイトを確認下さい。
たかの
個人でできる空き家対策
前述のデータで示した通り、空き家が発生する原因の半数以上は、相続によるものです。そのため、個人でできる空き家対策の第一歩は、親が元気なうちにしっかり話し合い、将来の方針を決めておくことです。
親が住まなくなった後、その家をどうするのかについて、親の意向を確認しないまま子どもが実家を相続すると、処分方法が決まらずに空き家のまま放置されるケースも少なくありません。
お客様自身がこのような事態に陥らないよう、事前に関係者全員で相続後の3つの選択肢について話し合っておきましょう。
- 空き家を売る・貸す
- 空き家を解体して土地活用する
- 空き家管理サービスを活用する
アイ子さん
たかの
お年末年始やお盆など、家族の集まるタイミングで話をしたり、エンディングノートを活用することをお勧めしています。
日本司法書士会連合会が作成したエンディングノートは国土交通省の公式サイトからダウンロードできます。
空き家を売る・貸す
放置している空き家の売却や貸し出しができれば、収益を得られる可能性があります。
空き家バンクに登録したり、不動産会社へ相談したりして、買い手・借り手がいないか探してみましょう。
実際に三島市の空き家を活用した実例を2つ紹介します。
空き家になっていた実家を売却して、移住者さんがリノベーションした実例です。
空き家になっても手入れを続け、家の状態が良かったため、水回りや壁など最低限の工事で済みました。
また、ご夫婦のご要望により、当時の雰囲気を残しつつ施工。売り手と買い手、両方に満足いただける結果となりました。
参考
空き家をリノベーションして暮らすNAKA-BITO 二瓶さん
築50年の空き家をパン屋さんに貸して活用した実例です。
相談を受けた時には、既に5年間以上空き家となっていたので、雨漏りを直すところから始まりました。
近所に迷惑をかけていた空き家が、今では地域に愛されるパン屋さんに生まれ変わりました。
売却か賃貸か、迷った時の判断基準について、こちらのページで解説しています。
空き家を解体して土地活用する
建物が老朽化して買い手や借り手がつかず、住居としての活用も難しい場合は、空き家を解体して土地として活用するというのも1つの方法です。
その例として、コインパーキング、駐輪場、貸しコンテナ、ちょっと目先を変えて貸農園などさまざまなものがあります。
どのように土地を活用するのかは周辺環境から判断し、需要に合った方法を選ぶようにしましょう。
空き家の解体する際の判断基準について詳しく知りたい方は、こちらのページで解説しています。
空き家管理サービスを活用する
民間の空き家管理サービスでは、空き家の見回り点検、管理作業、活用したい方とのマッチングなどを利用できます。
費用はかかってしまいますが、少ない手間で空き家を維持管理できます。
遠方に住んでいるため自分で管理できない方や将来の利用を予定しているが、現時点では住んでいない人に適しています。
空き家管理サービスについて、こちらのページから申込や相談を受け付けています。
まとめ
今回は、三島市が抱える空き家問題とその対策について紹介しました。
- 三島市の空き家率は増加して全国平均を上回る14.4%
- 三島市の人口は2030年までの10年間で、約1万人減少する
- 2030年まで30歳代は1,800人減り、75歳以上の高齢者は3,100人増える
国や三島市も対策を講じているものの、この3つの理由から空き家は増え続け、空き家問題も深刻化していきます。
空き家問題に巻き込まれないためにも、お客様自身で知識を増やすことも大切ですが、1人で全部行おうとすると、限界があります。
そのため、お客様に合った適切な提案をしてくれる不動産会社は、不動産の活用においてとても重要なパートナーになります。
特に、今回のように「空き家どう解決したら良いか」という課題は、活用方法など地域ごとの不動産需要で大きく関わってきますので、その地域に密着した不動産会社の知識が不可欠です。
アイ企画は、昭和61年から静岡県三島市に特化した地域密着型の不動産会社です。そのため地域の不動産需要に詳しいのはもちろんのこと、空き家の解体の処分にお困りのお客様には長年の経験から信頼できる解体業者様のご紹介も行えます。
そもそも空き家を解体する必要があるのか、「古屋付きつき物件」として売り出せないかどうかのかご確認やご相談も可能です。
まずはお気軽に、アイ企画までご相談ください。