地元密着の小さな不動産屋がAIチャットボットを導入した理由

私たち「アイ企画」は、創業から40年、静岡県三島市で信頼を積み重ねてきた地元の不動産屋です。

「最近、駅前のお店どうなった?」「お孫さん元気?」といった何気ない会話が交わされる場所。お客さんも「相談」というより「世間話」の延長で足を運ぶ感覚、そんな親しみのあるお店です。

会社の営業スタイルは、とてもシンプルでした。「困ってる人の話をじっくり聞いて、ぴったりの物件を探す」それを、ただ丁寧に、誠実にやってきた。ただそれだけです。

広告も、最初は手作りのチラシをポスティングするくらい。ネットの掲載も最小限で、基本的には「紹介でなんとかなる」時代でした。地元の人から「アイさんに聞けば間違いない」と言ってもらえるのが、最大の営業力だったのです。

その姿勢を大切にしてきたからこそ、今ではご紹介や口コミによるお客様が、全体の7割以上を占めるまでになりました。

地域密着、顔が見える関係、対話を重ねる時間、どれも効率とは正反対かもしれませんが、信頼を築くためには必要不可欠なものでした。

そんな私たちが、いま「AIチャットボット」を導入するという、新しい挑戦に踏み出しました。

「顔が見える関係性」を大切にしてきた不動産屋が、なぜ無機質に思えるAIを取り入れるのか?

「効率化」ではなく、「もっとお客様に寄り添うため」に選んだその理由とは?

たかの

この記事では、私たちの想いや背景、そして地元・沼津高専の学生と進めた開発ストーリーを通して、地域に根ざした不動産屋だからこそAIに期待する未来を、等身大でお伝えしていきます。

なぜ“今”、AIを導入するのか?

創業以来、私たちは「顔の見える関係」を何よりも大切にしてきました。

地域に根ざした不動産屋として、土地の匂い、街の風の流れ、そこに暮らす人たちの表情から得られる情報こそが、最良のご提案につながると信じているからです。

「対面主義」は、単なる営業スタイルではありません。それは、安心感を届けるための姿勢そのものでした。

だからこそ、最近耳にするAI導入やチャットボットには、少なからず抵抗感もありました。

「効率化のために、無機質な応答で済ませる」そんなことを、私たちがするのか?

結論から言えば、私たちは「効率化」のためにAIを導入したのではありません。

むしろ、もっとお客様に寄り添うためにこそ、AIが必要だと考えたのです。

お客様の声から生まれたヒント

ここ数年で増えてきたのが、「ちょっとだけ聞きたい」というお客様の声です。

アイさん

「売るかどうかはまだ分からないけど、今の相場ってどのくらい?」

アイ子さん

「ちょっとした質問を聞くために、わざわざお店に行くのは気が引ける。」

このような些細なご相談が、実はとても大事な入口なのです。

でも、私たちは日中ほとんど外に出ていて、オフィスを空けることも多く、電話に出られないことがしばしばありました。

さらに、夜間や土日、ふと気になったタイミングで連絡してくださる方も増えています。

特にご高齢の方や、共働きで忙しいご家族は、「日中にわざわざ不動産会社に連絡する」こと自体が心理的なハードルになっていたようです。

そこで私たちは、「営業時間外でも、安心感のある最初の相談窓口を持てないだろうか?」と考え始めました。

AIは“冷たいツール”ではなく、“温かさをつなぐ架け橋”に

こうして始まったのが、地元・沼津高専の学生とのAIチャットボット開発プロジェクトです。

「地元の人たちにとって、本当に使いやすく、安心できるチャットボットとは?」学生と何度も意見を交わし、実際の会話を分析しながら、少しずつ形にしていきました。

ボットの回答も、ただのFAQではありません。地域特有の売買事情や空き家問題、世代交代に伴う相談まで、リアルなやりとりから作られた対話型の情報源です。

そして完成したチャットボットは、営業時間外でも「まず話を聞いてくれる存在」として、少しずつお客様に喜ばれるようになっています。

「AI導入=効率化」の誤解を超えて

世の中では、AI=業務の効率化と捉えられがちです。でも、私たちが望んだのは逆でした。

顔が見える会社だからこそ、AIは人の代わりではなく、人にしかできない対応を支えるサポーターになってほしい。

たとえば、ちょっとした質問に夜中でも答えられることで、「明日、聞きに行ってみよう」と思ってもらえるきっかけになる。そんな存在を目指しました。

そうして、AI導入への一歩を踏み出したのです。

地域密着だからこそ、AIも手作りで

AIを導入する。そう決めたとき、私たちには一つだけ譲れない条件がありました。

それは、「このまちの人と一緒に作ること」です。

私たちが日々向き合っているのは、不動産そのもの以上に、人の暮らしです。

だからこそ、地元の空気を知る人と一緒に、お客様の気持ちを想像しながらAIを育てていきたい。

そう思って相談したのが、沼津工業高等専門学校(沼津高専)の学生でした。

若い技術と、地元企業のリアルが出会った瞬間

沼津高専といえば、地域に根差しながらも全国的に評価の高い技術系の学校です。

最初に相談を持ちかけたとき、少し意外そうな反応が返ってきました。

「不動産屋さんがAIチャットボットを作るなんて、面白いですね!」

そう言って興味を持ってくださった学生のおかげで、プロジェクトは動き出しました。

そして、学生がチームとして関わってくれることに。

彼は、最新のAI技術や自然言語処理に関する知識を持ちながらも、「実際の現場って、どうなってるんですか?」と素直に質問してくれました。

私たちが普段どんな相談を受けているのか、どうやって信頼関係を築いているのか、実際のやりとりを見てもらいながら、リアルな課題を共有していきました。

学生との開発会議は、まるで職場のように

開発が始まってからは、何度もミーティングを重ねました。

初回は緊張していた学生も、回を重ねるごとに真剣な目で質問や提案をしてくれるように。

「この質問は、どんな言い回しでも対応できるようにしたいですね」

「物件名が地元独特なので、表記ゆれを吸収する仕組みが必要かもしれません」

「スタッフさんの口調に似せた自然な言い方にしましょうか」

地域ならではの言葉づかいや、不動産用語の簡略化など、細かい工夫が積み重ねられていきました。

若い目線がもたらした“あたたかさ”と“現実感”

特に印象的だったのは、学生がとても丁寧に「地域の人の気持ち」を考えてくれたことです。

「夜中に相談する人は、たぶんちょっと不安なんじゃないですか?」

「チャットボットの最初の言葉って、“いらっしゃいませ”より“こんにちは”のほうが落ち着きませんか?」

技術だけでなく、気持ちの通う言葉選びを大切にする姿勢に、私たちも学ばされました。

また、地元で育った彼らだからこそ、「この町で部屋を探すって、こんな感じだよね」というリアルな視点を持っていたのも大きな強みでした。

「効率化」ではなく「寄り添う」ためのチャットボット

「AIを導入した」と聞くと、真っ先に「業務の効率化」を想像する方も多いかもしれません。

確かに、事務処理や問い合わせ対応を自動化すれば、人手も時間も節約できます。

けれど、私たちがAIチャットボットを取り入れた目的は、効率化ではありません。

むしろその逆で、お客様一人ひとりにもっと丁寧に、寄り添える時間を生み出すことが本当の狙いでした。

忙しい日々の中でも「話しかけられる安心感」

不動産業は、現地案内や調査、役所への手続き、契約対応など、とにかく外出が多く、営業時間内に事務所にスタッフが常駐していないことも珍しくありません。

その間、お問い合わせにすぐ対応できず、「返信が遅れてしまった」なんてことも、正直なところありました。

でも、AIチャットボットが導入されてからは、お客様がいつでも、どんなタイミングでも「まず聞いてみる」ことができる窓口ができました。

60代 女性/空き家の売却中のお客様

「夜にふと思い立って相談したら、すぐに返ってきた。なんだかホッとしました。

このような声をいただくたびに、AIが「機械的な対応」ではなく、人と人をつなぐきっかけになっていることを実感します。

「AIなのに、ちゃんと分かってくれる」

AIチャットボットには、これまでの相談傾向や地域の情報を学習させているため、やり取りの内容は想像以上に自然です。

一度利用されたお客様からは、こんな声もありました。

40代 男性/実家の土地売却したお客様

「AIなのに、ちゃんと自分の話を聞いてくれてる感じがした。いきなり電話は緊張してしまうけど、チャットだと気軽に質問できてよかった。

もちろん、複雑な事情や感情の伴う相談は、人の手に委ねています。AIが対応するのは、あくまで最初の一歩。

お客様の緊張や不安をほぐし、スムーズに人との会話へつなげる橋渡し役として機能しているのです。

このチャットボットがあることで、スタッフはより集中してお客様対応に時間を使えるようになりました。

そして何より、お客様は「いつでも話しかけられる」「待たされない」という安心を手に入れています。

それはつまり、「効率化」という言葉の裏に隠れた、おもてなしの質の向上だと考えています。

変わらない想いと、変えていく姿勢

AIチャットボットを導入してみて、私ははっきりと感じました。

「人にしかできないこと」と「AIだからこそできること」は、共存できる。むしろ、それぞれが補い合って、お客様にとってより良いサービスが生まれるのです。

40年前、自転車で物件案内をしていた創業当時から、携帯電話もインターネットもなかった時代を経て、今、AIという新しい技術を取り入れるところまで来ました。

時代の流れとともに少しずつ形を変えながら、「困っている人に、安心してもらいたい」「地元のことなら、何でも相談できる存在でありたい」その気持ちは、今もこれからも変わりません。

「三島市のことをいちばん分かっている不動産屋さん」そんな信頼を守り続けるために、アイ企画は“人のぬくもり”と“テクノロジーの力”を、これからもバランスよく取り入れていきます。

そして、どんなに時代が変わっても最後に鍵を手渡すのは、やっぱり「人の手」。

その重みと責任を知っているからこそ、私たちはこれからも、三島市でお客様のそばに立ち続けます。

たかの

このAIチャットボットが、その第一歩となれば幸いです。不動産を「売る」かどうかではなく、「知る」ことから始めてみませんか?

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