不動産売買の際にかかる初期費用のうち、金額の割合が大きい費用の1つが仲介手数料です。
選んだ不動産会社によっては100万円近くかかる仲介手数料ですが、多くの人が曖昧な理解のままに仲介手数料を支払っているのが現実です。
ところが、仲介手数料について正しい理解がないと、資金不足によって不動産売却ができなかったり、悪質な不動産会社に不当な請求をされたりするリスクがあります。
実際に私もお客様から、不当な仲介手数料を業者に請求されて悩まれているとの相談や、以前に業者で支払ってしまった手数料が妥当だったのかといった質問を多くいただいています。
しかし、仲介手数料について正しい知識と理解があれば、不当な請求に騙される心配がなくなるうえ、不動産会社選びの際にも「信用できる会社かどうか」を見極めるポイントとしても活用できます。
そこで今回は、不動産売却の仲介手数料についてまとめてみました。
さらに、仲介手数料に含まれる業務内容や支払いのタイミングも説明していますので、不動産を売却する際の参考にしてみてください。
アイさん
たかの
このページでは、初めて不動産を売却する方でも簡単に確認できるように、法律で定められている計算方法や実際の相場を分かりやすく解説させていただきます。
もくじ
不動産売却にかかる仲介手数料とは
仲介手数料とは、仲介を依頼した不動産会社の営業活動が実り、買主との売買契約が成立した際に、成功報酬として支払うお金です。
つまり、売却を途中でやめたり、不動産会社に直接買取ってもらう場合には、仲介手数料は発生しません。
このように、仲介手数料が成功報酬制であるにもかかわらず、買い手が見つからずに売却を取りやめたのに手数料を請求されてしまった…なんて場合も珍しくありません。
ここでは、仲介手数料に含まれる業務内容や計算方法・支払いのタイミングについて解説していきます。
たかの
複数の不動産会社に売却を依頼している場合には、買主を見つけて売買契約を成立させた不動産会社だけに仲介手数料を支払います。
仲介手数料に含まれる業務
不動産会社が行う仲介業務は以下の7つです。仲介手数料にはこうした業務で発生する経費が含まれています。
- 不動産売却に関する適切なアドバイス
- 不動産調査や査定
- チラシの作成や不動産情報サイトへの掲載(広告掲載)
- 購入検討者への物件案内
- 不動産売却条件の交渉
- 契約手続き
- 決済・引渡し手続き
上記のような通常の仲介業務に含まれない業務を依頼した場合は別途費用が掛かります。
例えば、「不動産会社のサービス範囲を超えた広告依頼」や「遠方の買主への交渉にわざわざ不動産会社を派遣する」といったお願いをする場合です。
このように、売主の要望により発生した費用や通常の仲介業務サービスを超えた特別な費用に関しては、別途請求されてしまう可能性があるので注意しましょう。
たかの
仲介手数料の上限額と計算方法
仲介手数料は法律(宅地建物取引業法)で上限金額が定められており、不動産会社は原則としてこの上限金額を超える仲介手数料を請求することができません。
宅地建物取引業法第四十六条 第一項及び第二項
一 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
二 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
たかの
まずは、仲介手数料の上限金額を早見表にしましたのでご覧ください。
売却金額ごとの仲介手数料早見表 | |
売却金額 | 仲介手数料の上限金額(消費税10%含む) |
100万円 | 55,000円 |
200万円 | 110,000円 |
300万円 | 154,000円 |
400万円 | 198,000円 |
500万円 | 231,000円 |
600万円 | 264,000円 |
700万円 | 297,000円 |
800万円 | 330,000円 |
900万円 | 363,000円 |
1,000万円 | 396,000円 |
2,000万円 | 726,000円 |
3,000万円 | 1,056,000円 |
4,000万円 | 1,386,000円 |
5,000万円 | 1,716,000円 |
6,000万円 | 2,046,000円 |
7,000万円 | 2,376,000円 |
8,000万円 | 2,706,000円 |
9,000万円 | 3,036,000円 |
1億円 | 3,366,000円 |
続いて、仲介手数料の計算方法を確認していきましょう。
仲介手数料の計算方法には、原則的な計算方法と簡便法がありますが、まずは原則的な方法から説明していきます。
原則的な計算方法は下表のとおり、売却金額に応じて決められた割合(仲介手数料率)をかけて求めます。
仲介手数料の計算方法 | ||
売却金額 | 仲介手数料率 | 計算方法 |
400万円を超える金額 | 3% | 売却金額×3%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の金額 | 4% | 売却金額×4%+消費税 |
200万円以下の金額 | 5% | 売却金額×5%+消費税 |
国土交通省告示第493号:宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬規程はこちら
例えば、売却金額が1,000万円の土地の仲介手数料を算出するには、下記の図解のように売却金額を3段階に分けて計算します。
売却金額ごとに、かかってくる仲介手数料率も異なるため、原則的な計算方法は複雑です。
そのため、不動産の売却金額が400万円超の場合には、以下の簡便法(速算式)を使って求めることをお勧めします。
速算式 | ( 売却金額×3%+6万円 )+消費税 |
例:売却金額1,000万円の場合 | ( 1,000万円×3%+6万円 )+3.6万円=39.6万円 |
原則的な計算方法と同じ答えになりました。
お客様自身で計算する際は、間違いを避けるためにも簡単な速算式を利用しましょう。
支払うタイミング
前述でも述べた通り、仲介手数料は「成功報酬」なので、売買契約が成立するまでは支払う義務はありません。
仲介手数料を支払うタイミングは、一般的な商慣習として売買契約締結時に全額の50%、決済・引渡し時に残りの50%を支払うケースが多いです。
このように一般的な商慣習はあるものの、不動産会社の役割は売買契約が成立したら終わりではなく、決済・引渡しまでの様々な事務手続きがあります。
そのため責任感から仲介手数料の支払いは決済・引渡し時に全額の100%を支払うこととする「完全成功報酬」の不動産会社もあります。
お客様にとっても、決済・引渡し時に買主から支払われる売却金額をそのまま仲介手数料に充てることができるのでメリットが大きいです。
いずれの支払うタイミングにしても、仲介手数料はあくまで成功報酬なので契約締結前に支払うことはありません。
そのため、契約締結前に支払いを要求する不動産会社には注意が必要です。
不当な請求を防ぐため不動産会社と媒介契約を締結する際には、支払いのタイミングについてしっかり説明を受けましょう。
媒介契約とは、不動産売買の仲介を依頼する場合に不動産会社と結ぶ契約のことです。媒介契約には、不動産会社から受けられるサービスの内容や、サービスに対する仲介手数料などを明確にすることで、仲介業務に関するトラブルを防ぐ効果があります。
妥当な仲介手数料の相場
先程も触れましたが、仲介手数料には法律で上限金額がありますが、下限金額に決まりはありません。
そのため仲介手数料半額を売りにしている不動産会社は、お客様にはとても魅力的に映るでしょう。しかし、安さだけで不動産会社を決めてしまうのは危険です。
仲介手数料が半額であったとしても、サービスの質が悪ければ納得のいく売却が期待できないからです。
例えば、2,000万円の土地の場合、仲介手数料が半額なら約36万円の節約になります。しかし、本来なら2,000万円で売れるはずの土地が、不動産会社の営業努力不足のために1,800万円でしか売れなかったら、単純に損です。
このような失敗を防ぐため、ここでは妥当な仲介手数料の相場と仲介手数料半額のからくりについて解説して行きます。
売主の仲介手数料は上限額が一般的
法律が定めているのは仲介手数料の上限金額ですが、上限通りの仲介手数料を請求する不動産会社がほとんどです。
不動産会社から見れば、質の高いサービスを提供するためには十分な費用は受け取る必要があるためです。
仲介手数料が安くて、かつ安心して仲介を依頼できる不動産会社を探すのは難しいでしょう。
そのため、仲介手数料を安く抑えることよりも「親身に対応してくれるのか、節税対策をサポートしてくれるか、どんな戦略で売出してくれるか」をきちんと説明し、誠実に対応してくれる不動産会社を選ぶことが不動産売却を成功させる秘訣です。
仲介手数料が半額のからくり
仲介手数料は上限金額が一般的ですが、中には半額を売りにする不動産会社もあります。
不動産売却の仲介における不動産会社の利益は仲介手数料のみとなりますので、手数料をカットする場合、何かしらの仕組みがあると疑いましょう。
ここでは仲介手数料半額サービスの仕組みやデメリットを紹介します。
仲介手数料を安くできる仕組み
半額の仲介手数料でサービスを提供する不動産会社は、売主の仲介手数料を安くする代わりに、買主からしっかり仲介手数料を支払ってもらえる仕組みとなっています。
売却する際の仲介手数料は売主が支払いますが、その裏では不動産を購入するために不動産会社に赴いている買主が存在します。
不動産の購入が決定したら、買主も不動産会社に仲介手数料を支払うのです。
一般的な売買であれば、売主は依頼した不動産会社に、買主は依頼した不動産会社に別々に仲介手数料を支払っています。
図のように、不動産業界全体で共有している売却不動産情報を基に、全国の不動産会社がそれぞれ買主を探すため、買主が見つかりやすくなります。
一方で、売主の仲介手数料を安くする場合は、買主から必ず仲介手数料をもらう必要がありますので、上の図のように1つの不動産会社だけで買主を探すことから当然買主は見つかりづらくなります。
安い仲介手数料に潜む「囲い込み」
一見すると問題ない仕組みに思えますが、その中には「囲い込み」というリスクが潜んでいます。
囲い込みとは売主から売却依頼された不動産を、他の不動産会社に契約させないことを言います。
例えば、他の不動産会社から「○○の土地を買いたいって人がいるので紹介させてほしい」と電話があっても、「すみません、すでに契約予定なので」と嘘をつき、売却不動産情報を自社で囲い込みます。
本来であれば、業界全体で不動産情報を共有することで、早期売却と売主の利益を確保することができます。
しかし、売主の仲介手数料を安くする場合は、買主から必ず仲介手数料をもらう必要がありますので、他の不動産会社へ不動産情報を共有することはありません。
この囲い込みによって、本来なら2,000万円で売却できた土地が、1,800万円でしか売却できないことも珍しくありません。
つまり、仲介手数料が半額であったとしても、安売りされてしまうのであれば本末転倒なのです。
そのため、仲介手数料を安く抑えることよりも「親身に対応してくれるのか、どんな戦略で売出してくれるか」をきちんと説明し、誠実に対応してくれる不動産会社を選ぶことをお勧めします。
たかの
みんなの不動産売却体験談
仲介手数料以外にかかる費用
仲介手数料が確認できたら、不動産を売却する際にかかる費用も確認しておきましょう。
不動産の売却では大きなお金が動くので、売却にかかる費用も高額です。
そのため、想定外の費用負担があれば、手取り額が減り、売却後の計画に影響を及ぼす恐れがあるからです。想定外の費用負担から手取り額が減り「ローンが完済できなかった」なんてことになりかねません。
そこで仲介手数料以外にかかる費用12種類を以下の表で確認しましょう。
必ずかかる費用 | |||
費用項目 | 説明 | 金額 | |
1 | 仲介手数料 | 不動産仲介の成功報酬費用 | (売却金額 × 3% + 6万円)+ 消費税 |
2 | 収入印紙代 | 契約書に貼付する収入印紙費用 | 1,000円 〜 6万円 |
3 | 必要書類発行費 | 印鑑証明書等の必要書類に発行費用 | 1,000円程度 |
4 | 譲渡所得税 | 不動産を売って得た利益にかかる税金 | 不動産所有期間が5年以下の場合:売却益 ×(所得税30.93% + 住民税9%) 不動産所期間が5年以上の場合:売却益 ×(所得税15.315% + 住民税5%) |
たかの
場合によってかかる費用 | |||
費用項目 | 説明 | 金額 | |
5 | インスペクション費 | 建物を診断し状態を確認する費用 | 5万円 〜 6万円 |
6 | ハウスクリーニング費 | 建物内のクリーニング費用 | 4万円 〜 10万円 |
7 | 草刈り費 | 敷地の草刈り費用 | 7,000円〜3.7万円 |
8 | 境界測量費 | 敷地境界を明示するための測量費用 | 25万円〜70万円 |
9 | 不用品処分費 | 不用品の処分費用 | 1㎡/1万円程度 |
10 | 建物解体費・建物滅失登記費 | 建物の解体費用・建物登記を滅失する費用 | 105万円〜240万円・3.5万円〜5万円 |
11 | 引越し費 | 引越し費用 | 5万円〜25万円 |
12 | 抵当権抹消登記費 | 金融機関からの借入がある場合、その抵当権を抹消する費用 | 1.3万円程度 |
13 | 住所変更登記費 | 登記簿上の住所と現住所が異なる場合、登記簿上の住所を変更する費用 | 1.3万円程度 |
不動産の状態や売却する条件に応じてかかる費用の種類やその内訳について、こちらのページで詳しく解説しています。
仲介手数料で損しないための2つの注意点
売却を成功に導くためにも、仲介手数料で損しないための2つの注意点を確認しておきましょう。
仲介手数料の知識を身に付けておく
仲介手数料について正しい知識を身につけておくことが大切です。
知識を身につけておくだけで、悪質な不動産会社に不当な請求を未然に防ぐことができるからです。
ここで、実際に不動産売買の仲介で起きている紛争(トラブル)件数トップ10を見てみましょう。
不動産売買仲介における紛争件数トップ10 | ||
紛争相談の種類 | 件数 | |
1位 | 重要事項の説明等の不告知 | 94 |
2位 | 報酬(仲介手数料) | 24 |
3位 | 契約の解除 | 21 |
4位 | 瑕疵問題 | 19 |
5位 | 媒介に伴う書面の交付 | 13 |
6位 | 契約内容に係る書面の交付 | 7 |
7位 | 相手方等の保護に欠ける行為の禁止 | 5 |
7位 | 預り金・申込証拠金等の返還 | 5 |
7位 | 誇大広告等の禁止 | 5 |
10位 | 日影、眺望、境界等の相隣関係 | 4 |
10位 | 威迫行為の禁止 | 4 |
不動産売買仲介における紛争件数は公益社団法人不動産流通推進センター「不動産業統計集」(2023)記載のデータに基づき作成しています。
上の表から分かるように不動産売買仲介で発生した紛争の中でも、報酬(仲介手数料)が2番目に多いという結果となっています。
つまり、仲介手数料の不当請求などによる紛争トラブルは決して他人事ではなく、誰にでも起こり得るものなのです。
このようなトラブル回避するためにも、お客様自身で仲介手数料の正しい知識を身につけておきましょう。
仲介手数料に見合う働きをしてくれる不動産会社を選ぶ
金額の大きな不動産売買に関わる仲介手数料ですから、金額は決して安いものではありません。
そのため、ついつい安価な金額を提示する不動産会社に惹かれてしまうかもしれませんが、まずは「しっかり売却をサポートしてくれる不動産会社であるかどうか」を確認することが重要です。
不動産売却では、決して安くはない仲介手数料を不動産会社に支払うことになります。仲介手数料は、お客様が不動産業者から受けるサービスの対価として支払うものです。
例えば、売却金額1,000万円の不動産であれば、39.6万円(税込)の仲介手数料を支払います。
「約40万円のサービス料を支払うに値する不動産業者かどうか」を見極めることが大切です。 つまり、支払う金額以上の働きをしてくれる不動産会社を選ばないと損ともいえます。
誠実に対応してくれる不動産会社を選ぶ第一歩は、不動産会社から査定を取り比較して決めることです。
不動産会社を選ぶポイントについて、こちらのページで詳しく解説しています。
まとめ
今回は、不動産売却にかかる費用の中でも高額な仲介手数料の計算方法や相場などについて紹介しました。
不当な請求を回避するためにも、下記4つが大切であるとご理解いただけたはずです。
- 成功報酬制であるため、売買契約が成立していなければ支払う必要はない
- 仲介手数料の上限は法律で決められており、上限以上の金額を請求する不動産会社は違法
- 不動産会社に、仲介手数料以外の費用は基本的に支払う必要がない
- 仲介手数料を安く抑えることよりも誠実に対応してくれる不動産会社を選ぶ
不動産売却で失敗しないように、しっかりとお客様自身で知識を増やすことも大切です。しかし、1人で全部行おうとすると、限界があります。
そのため、お客様に合った適切な提案をしてくれる不動産会社は、不動産の売却においてとても重要なパートナーになります。
逆に、仲介手数料が安いからという理由で提案力の低い不動産会社を選んでしまった場合、損をしてしまうことになりかねません。
不動産の売却を成功させるためにも、信頼できる不動産会社を見つけることをお勧めします。